アンバートリップ

 思わず叫んだ自分の声に驚いて、再び現実に引き戻される。


 相変わらずの夕焼けの中、ゴオーと川の音が聞こえている。



 やっぱり、開けてはいけなかったのだ。

 開けてはいけない、パンドラの箱。




 パンドラの箱は、最後に希望が残った。

 だけど私の箱に残るのは、絶望以外の何物でもない。




 だからこそ、箱の中身がどれほど甘美な珀との思い出だとしても、絶対に開けないと決めたのだ。






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