あの日、あの夜、プールサイドで



「真彩のせいなんかじゃない。
真彩が悪いんじゃないから、気にしなくていい。」


「…コウちゃん…」


「みんなをこんな風に心配させる寧々が悪い。
見つけたら…思いっきり叱ってやらなきゃな。」



笑える余裕なんてどこにもなくて
今にも発狂しそうな思いを抱えてるのは、俺も真彩とおんなじだった。



だけど…
ここで笑わなきゃダメだと思った。



ここで笑わなきゃ不幸の神様の思うツボ
泣いたが最後、階段を転げ落ちるように奈落の外へと陥れられてしまいそうで、怖くて、怖くて、俺は無理して笑ってた。





――大丈夫、大丈夫

心配するな、光太郎。




大体…さ??

寧々はかくれんぼしてるだけなんだ。

困ってる俺たちを見て、笑ってるだけなんだ。



もう少ししたらさ?
ケロッとした顔をして、俺たちの前に現れて



『寧々!!』

『へへっ。
びっくりした?コウにいちゃん!!』



ひょっこり顔を出しながら
俺たちを見てケラケラと笑いだすに違いない。




『コウにいちゃーーーんっ!!』




そう。
俺の大好きな
何よりも大切な、あの笑顔


真夏のヒマワリのように明るい笑顔を見せて、寧々は笑ってくれるに違いない。



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