あの日、あの夜、プールサイドで


寧々が逝った、その日。


父親が警察に逮捕された。



警察が捕まえたときには、覚せい剤を使いまくって完全に廃人のようになっていたらしく。うつろな目で宙を見ながら


『悪魔は俺が退治した…!!俺が退治してやったんだ…!!!!』


そう言って
クスクスと気味悪く笑っていたという。




「なんて酷い話なんでしょう…!!」




警察の人からそれを聞かされた時、静枝さんは初めて怒りで体を震えさせた。




覚せい剤のせいで錯乱状態に陥っていた、寧々の父親。



自分が家族と離れて暮らす原因になったのは、寧々。

母親が自分を拒否する原因は、寧々。

自分が一人で暮らさなきゃいけないのは、寧々のせい。




俺が今、仕事がなくて貧乏なのも

ツイてないのも

毎日苦しいのも、全部全部アイツが悪い。

寧々がいるから、俺は苦しい思いをしてしまう。

アイツは貧乏神だ。

アイツは悪魔だ

アイツは悪魔だ


アイツを殺せば、自分は幸せになれるに違いない…!!



そんな言葉を
父親は嬉々として語ったらしい。



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