あの日、あの夜、プールサイドで


寧々は何にもしていないのに

悪いことなんて何一つせず、ただ一生懸命毎日を生きていただけなのに、神様は寧々の命をあっさり奪った。


あんなに祈ったのに。
あんなに祈ったのに、神様は寧々を見捨てた。


俺の願いなんて、何一つ聞き入れてはくれなかった。



――神様なんていやしない。



この世界に神様なんていやしない。

そんなのは淡い幻想。



いるのは人間だけ。

苦しみと憎しみを背負った人間だけ。





小さな寧々のカラダが天に昇って
白い結晶に変わっていく。


その煙が止まってしばらくした後、寧々は姿を変えて俺たちの前に現れた。



寧々の面影がどこにもなくなった、ちいさなお骨。



みんなが涙ながらに寧々の小さなお骨を拾っている最中


――寧々…ゴメンな。


俺は誰にもバレないように、小さな小さな寧々の欠片を一つだけ、かすめ取った。


生きている寧々はここにはいないけれど、アイツの欠片が近くにあれば寧々の魂はいつも俺と共にある。


そう…思ったから。




ヒマワリのような笑顔でみんなを癒してくれた寧々。

俺の氷の心を溶かしてくれた寧々。

俺のお嫁さんになるの、と言って笑っていた寧々。




そんな俺の天使は、八月の熱い熱い夏の日に。

本当の天使になって、空の上へと旅立った――……



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