あの日、あの夜、プールサイドで
◇進歩
寧々が逝った中学二年生の全国大会は、あっけなく予選敗退。
その年の100m平泳ぎの優勝者は
もちろん藤堂響弥
優勝者が受けるヒーローインタビューでは
「来年は三冠を目指します。」
と、大口を叩いていた。
散々な結果に終わった大会だったけれど……いいことだって、1つだけあった。
「キラ~、オマエにラブレター!!」
九月も半ばになり、ようやく涼しくなってきた頃。学校のプールで練習していた俺に月原が一枚の白い封筒をピラピラと見せつける。
水から上がってその封筒を受けとると、中に入っていたのは、あるスイミングスクールの入会要項。
「SGスイミングスクール……??」
そのスイミングスクールの名前はSGスイミングスクール。言わずと知れた全中チャンピオン、藤堂響弥も籍を置く超名門クラブ。
「おう。SGは東京が本拠地なんだけどな?どうやら神奈川にも侵出してくるらしいんだよ。その神奈川校の一期生としてお前をスカウトしたいらしい。」