あの日、あの夜、プールサイドで

スカウト……ねぇ……。


入会要項をペラペラめくると、そこには50メートルの温水プールに綺麗な更衣室。それに清潔感溢れるシャワー室。

ジムにマッサージ室にと今の環境とは全く違う夢のような設備の山、山、山!!


選手を指導するコーチ陣だって、そうそうたる顔ぶれが並んでいる。


――すごいな……


想像できない世界だ。



口をポカンと開けたまま
ペラペラとめくっていると


「お前に推薦したいのは特別強化コースだとよ。」


そう言われて、特別強化コースの入会金を見たら


「に、2万?!」


入会金も破格なら
月謝だってバカにならない。


特別強化コースの月々の月謝は四万五千円。


設備費、施設費含む、って書いてあるけど……高すぎだろう!!


「申し出はありがたいけど……無理だよ。」


俺はその金額を見るなり、月原に要項を突き返す。


今でさえ静枝さんに申し訳ないと思っているのに、これ以上静枝さんに迷惑かけたくない。


静枝さんと俺は親子だから、遠慮はナシだっていつも思ってるけど……

金が絡むと話は別だ。


俺はどうしても、その部分だけは静枝さんに甘えられない。


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