あの日、あの夜、プールサイドで
寧々は“保護”
俺や真彩みたいに両親がいないワケじゃない。
あくまでも一時的に愛児園で預かっているだけなんだ。
それはわかってる。
それはちゃんとわかってるよ。
でも……
俺、寧々には幸せになってもらいたいんだ。
誰よりも一等幸せになってほしい。
泣いてなんて欲しくない
苦しんで欲しくない
ずっとずっと笑っていて欲しい。
母親と一緒に暮らせることは
それはそれで幸せなことなんだろうけど……俺の中には不安だけが大きく残る。
「それでも俺は寧々を渡したくない!!」
「光太郎…。」
「覚せい剤なんかに手を染める、だらしない母親なんだぞ!!?また手を染めないとも限らない!!」
俺はあの母親が寧々を幸せにしてくれるとは思わない。
「俺は反対だ!
絶対に反対だ!!
寧々は愛児園で暮らしてた方が幸せになれるに決まってる!!渡さない!絶対に母親なんかに渡さないからな!!」
心の底からそう叫んで。
ビシッとバシッと言い放つと、俺はドカドカと大きな足音をたてながら寧々のまつ自室へと戻っていった。