あの日、あの夜、プールサイドで


寧々や真彩
静枝さんに愛児園の兄弟たち



俺を彩る大切な誰かを守るために、俺は強くならなきゃいけない。


誰よりも強く
誰よりも速いスイマーに。


スイマーとして確固たる地位を築けば、俺はきっと誰をも守る強い強い力をこの手に掴むに違いない。


スイマーとして成功するだけじゃまだ足りない。
俺の大切な何かを守るためにはさ??
俺は誰よりも早く大人にならなきゃいけない。



そうしなきゃ…
俺は大切な何かを守れない。



親もいない
金もない



そんな俺が何かを守るためには、月原の言うとおりプライドとか、誇りとか、つまらないものは全部捨てて手段を選ばず前に進むしかないのかもしれない。



素直にそう思えた。



普通の14歳が通る道
親に甘えて、ワガママを突き通して、オトナに意味もなく反抗して。実現もしない夢を語って、幸せにぬくぬくと生きていく暇なんて俺にはない。


俺に残されてるのは…水泳


俺が幸せになる道も
周りのみんなを守る道も
この水の中にしか残されていない。



――なんだ…
俺も同じ穴のムジナじゃないか。



月原の言葉はウソがない。
きれいごとなんて食べられない。
正論なんて、何にもならない。


俺は…ドブネズミだ。


藤堂みたいにキレイな道ばかりを歩いて行けるはずがない。


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