あの日、あの夜、プールサイドで
「……その顔……。
なんか掴んだみてぇだな。」
俺の目の前で教師の皮を被った悪魔がニヤリとほほ笑む。
「うん……
認めるのは嫌だけどね。」
複雑な気持ちを抱えながら、SGスイミングスクールの要綱を受け取ると
「それでいい。
きれいごとだけじゃ生きていけねぇ。だけどな??悪魔に魂を売り渡しただけでも幸せになはなれねぇ。」
「…どういうこと??」
「キレイな部分と汚い部分。
二つを上手に扱いながら綱渡りしていけ。
すげぇ汚い部分も、キレイな部分も、どっちもオマエだ。」
月原は俺の頭をポンポンと叩く。
そして俺の顔をじっと見て柔らかに微笑むと、クルリと踵を返しプールの出口に向かって歩いていく。
そして、出口のフェンスに手をかけると
「SGには来月から来て欲しいってよ。
一回目は一緒にいってやる。
とりあえずオマエは親御さんに了承とっとけよ??」
こちらをふりかえることなく月原はピースをして、その場から風のように去って行ったのだった――……。