あの日、あの夜、プールサイドで
優しい優しい、静枝さん。
彼女の手に触れるだけでギスギスした俺の心が穏やかになっていく。
きっと静枝さんはこう言いたいんだ。
『頑張らなくてもいい。
争わなくてもいい。
あなたのありのままが一番美しくて、素晴らしい。』
だけど…ゴメン、静枝さん。
ドブネズミでも生きてるんだ。
ネズミだってさ??やる気になればネコも噛む。
俺は許せない。
どうしても負けたくない。
普通の幸せに浸かって、親に友達に、何もかもに甘えてるようなヤツに絶対負けたくない。
そんな奴らに、負けてたまるか!!
強く、そしてしたたかに。
頭と体をフルに使って、絶対にのし上がってやる。
大切な“誰か”を守れるように、もう二度と失わないように、俺は誰よりも強くなろう。
爽やかな夜風の舞う、初秋の夜
俺は誰にも負けないスイマーになろう、と決意した。
静枝さんや愛児園の兄弟たちや真彩の為に。
何よりも…寧々の為に。