あの日、あの夜、プールサイドで

◇卒業


――――――………
――――――――………

「いいぞー、キラ!!
膝絞めろ、膝!!」


跳ねる水しぶき
煌めく水の粒
大きなゲキと水を掻く音だけが響くプール。


俺がSGに入ってから早や2年が経過しようとしていた。



中学2年だった俺も高校1年生。
中2の頃の全国大会では予選敗退だったけど、次の全国大会では100M、200Mで2位入賞。


ジュニアクラスの国際大会なんかにも呼ばれるようになって。泳いで泳いで泳ぎまくって、気づいた時には俺は強化選手の一人になっていた。


大会に出るたび、増える賞状にトロフィー、そしてメダルの山。


ついこの間の大会で2位になって、いつものように園長室にもっていくと


「光太郎、どうしましょう。」

「え??どうしたの??静枝さん。」

「これ以上トロフィーが増えたら、もう置き場がありません。」


静枝さんは困ったように、喜ぶように、俺にこんな言葉をかけた。



なかなか思うように泳げない時もあるけれど、今は泳いでいる時が一番楽しい。楽しくて楽しくて仕方ない。


「コウ兄ちゃん、すげぇなぁ!!」

「学校の友達にいっぱい自慢したんだぜ!!?」


愛児園にいるチビ達が嬉しそうに俺に話してくれる時、真彩が「おめでとう!」と言ってくれるたび、俺は嬉しくて嬉しくて堪らなくなる。



――生きててもイイよ



そう言われているみたいで、たまらなく嬉しくなる。



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