あの日、あの夜、プールサイドで
もっと深くキスしたい
もっともっと繋がりたい。
そう思うたびに、俺は寧々の笑顔と泣き顔を思い出す。
俺のお嫁さんになる、と言った寧々。
大好きなあの笑顔と
忘れたくても忘れられない、あの涙。
思いだしてしまったら……それ以上進めない。
どう頑張っても俺は触れるだけのキス以上の関係に進むことが出来ず。ジュンの言うとおり俺は真彩と“老夫婦”のような落ち着いた付き合いしかできずにいる。
寧々の欠片の入ったお守り袋を見つめて、ハァとため息を吐くと
「実際寧々が生きてたら妬くと思うよ?確実に真彩に妬くと思う。だけどさー…、寧々は…もういないじゃん。」
「まぁ…そうなんだけど……。」
「寧々を大事にするのはコウちゃんのイイトコだ。俺はそういうコウちゃんの優しいところってすっげぇ好きだけどさ??真彩にとってそれは残酷以外の何物でもない、と俺は思うぞ??」
そう言ってジュンはベッドに横になったままウーーーンと思い切り伸びをする。
「俺ならイヤだね。
恋人がそんな風に煮え切らない態度を見せるのは我慢ならねぇ。」
「ジュン……。」
「コウちゃん。
寧々を大事にするのは勝手だけどさー??
好きなら不安にさせるなよ。
手の早い男も嫌だけどさ??手を出されないっていうのも、それはそれで傷つくモノなんだぜ??」
傷つく…??
その一言にビクンと俺の心と体が反応する。
真彩は優しいから
あの事件をすべて知ってるから
俺のイイトコも悪いトコもなんでも知ってるから、大丈夫だと思ってた。
許される、と思ってた。
真彩なら焦らなくても、
ずっとずっと待ってくれると思ってたけど…違うのかな。