あの日、あの夜、プールサイドで


それから1ヶ月は驚くほど静かな毎日がやってきた。


寧々と一緒にご飯を食べて
アイツの髪を結ってやって


俺が中学校に行ってる間
寧々は幼稚園で友達と遊んでる



愛児園に帰ったら寧々と一緒にご飯を食べて、風呂に入って、ぴったりとくっついたままコアラの親子のように眠る。




何気ない
当たり前だった日常。


あの静枝さんの言葉は全部嘘で
このまま、こんな毎日が過ごせるんじゃないか。


母親もやっぱり一人で生活するのが精一杯で、寧々のこと迎えにこれる余裕なんてなかったんだ。



――よかった。



これでずっと
寧々と一緒にいられる。





そう思っていた、ある日の日曜日。






部活から帰ってきて愛児園の玄関を見ると、見慣れない黒いハイヒールに黒い男性用の革靴が目に留まる。





――まさか……、まさか……!!





泣きそうになる気持ちを押さえながら、静枝さんのいる園長室の扉をバタンと開けると、そこには少し派手目の服装をした若い女の人と中年のおじさん。


それに、難しい顔をした静枝さんが来客用のソファーに向かい合って座っていた。


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