あの日、あの夜、プールサイドで
「大丈夫だよ。
真彩ならどんな時だって大丈夫。」
変に気を使う真彩が可愛くて、クスクス笑いながらそう告げると
「よかった。
そう言ってもらえるとホッとする。」
真彩は安心したように微笑むとホウと1つ、ため息を吐いた。
愛児園に訪れた、静かな夜。
昼間はうるさいチビ達はもうすっかり夢の中で、中学生や高校生達は自室で勉強したり、テレビを見たりして過ごしているから、共同スペースにはあまり人がいない。
いつもは一人でご飯を食べて
一人で食器を片付けて
一人で勝手に寝てるから
隣に真彩がいると落ち着かない。
安心しすぎて
幸せすぎて、落ち着かない。
「なんかホッとするなぁ。
真彩がいると。」
晩御飯のコロッケを口に運びながら、そう呟くと
「……え??」
真彩は驚いたように目を見張る。
「真彩は無条件で俺を好きでいてくれるから。絶対裏切ったりしないってわかるから、一緒にいてすごく安心するよ。」
静枝さんも、寧々も、真彩も
三人は無条件で俺を愛してくれて、癒してくれる。
血は繋がらないけれど、大切な絆で結ばれた、大切な俺の家族。
信愛を込めて
真心を込めて贈った一言は
「それって家族として……ってこと?」
「……え??」
「そうだとしたら何だか複雑だよ。
だって私は男の人としてコウちゃんが好きなんだもん。」
真彩の寂しそうな笑顔と共に返される。