あの日、あの夜、プールサイドで
『どうして抱いてくれないの?』
真彩に対してそういう気持ちは持っても、行動に移せないのは、すごく単純な理由。
――大事だから。
真彩が誰よりも大切で、何よりも大事にしたいから、責任も持てないくせに自分の欲望だけで真彩を汚したくない。
「ごめん。不安にさせてごめん。
だけど……もうちょっと待って。」
「……え……」
「俺、ちゃんと責任も持てないくせに真彩のコト抱きたくない。」
彼女の瞳を見つめながら、きっぱりと告げると
「私は……いいって言ってるのに??」
悲しそうに真彩は眉を歪める。
――ゴメン、真彩……
「真彩がいいって言っても俺が困る。
不安なのも、もどかしいのもわかるけど……ちょっと待って欲しい。」
ごめん、真彩。
だけど俺はこんな気持ちの中で真彩のコト抱きたくない。
抱くことなんて
SEXなんて酷く簡単なことで
それで気が済むのなら、今すぐヤッちゃえばいいじゃん!ってジュンなら言う気がする。
でも……
俺にとって、真彩は特別だから。
特別だから、そう簡単に抱けない。
大事すぎて
特別すぎて
一歩踏み出すのにひどくためらう。