あの日、あの夜、プールサイドで
真っ青な顔をしたまま扉を開けた俺をみんながハッとした顔で見つめている。
俺の姿を見つけると
「松浦さん。
彼が先程話していた息子の光太郎です。」
「……あ……。」
「光太郎。こちらは寧々ちゃんのお母様と保護司さん。ご挨拶なさい。」
静枝さんは困ったように、寧々の母親に俺を紹介する。
コイツが……寧々の母親。
俺はまじまじと目の前にいる女を観察する。
元ホステスとかそんな感じなのかな。
寧々の母親は黒いリクルートスーツに身を包んでいるのに、その体からは夜の蝶の匂いがしてくる。
下品で安っぽい
夜の匂いがプンプンする、寧々の母親。
肩下まである、長い髪
すらりとした体型に
きれいにネイルの施された、爪
見れば見るほど嫌になる。
こんな女に渡しちゃダメだと心底思う。
両手を握りしめながら
ギリリと彼女を睨み付けてながら
「俺、アンタに寧々を渡すつもりなんてないから!」
俺は寧々の母親にそう啖呵を切る。