あの日、あの夜、プールサイドで
人って不思議だ。人の恋愛に口出しされると、こうも腹が立つものなのだろうか。


いつになく俺を攻め立てるジュンに無性に腹が立って

「俺と真彩のコトなんだから、ほっとけよ!!」

腹の底から思いっきり叫ぶと


「コウちゃんはわかりやすいなぁ。」

「なんだと?!」

「そこまで怒るってことは…図星なんだろ。」


そう言って、切れた唇から流れ出る血を右腕でクイッと拭いながらジュンは呆れたようにクスクス笑う。



「どうせ真彩のコトなんて、可愛いお人形程度にしか思ってないんだ。」

「違う!!」

「意思のない可愛い可愛いお人形。
それがコウちゃんの好きな真彩なんだろ??」

「違う!!」


違う!!

違う!!

違う!!

違う!!


俺の好きなのは優しくて穏やかで、いつも俺を見てくれる、あの穏やかな真彩だ。


ジュンの言ってる真彩なんかじゃ、決してない!!


「結局のとこはさ??
コウちゃんが一番好きなのは寧々なんだ。真彩はオマケ。」


「違う!!」



わからない。
なんで真彩もジュンも寧々のコトを持ち出すんだ??

もちろん寧々のことは今だって忘れられない。


寧々が望むのなら、なんだってしてやりたい。もし、もう一度だけ会えるのなら、悪魔に魂を売り渡してでも会いたいと思う。


だけど、それとこれとは別のコト。


寧々への気持ちと真彩の気持ちは全く違うものだから、同じ天秤になんてかけられるはずがない。




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