あの日、あの夜、プールサイドで
認めたくはない。
妹みたいに大事に思ってる寧々にそういう感情を抱くのって間違ってると思う。
だけど……
俺は異常なほどに寧々に固執してたから
寧々を失いたくない一心で、抱くかもしれない。
ジュンの言うとおり、寧々を自分から逃したくない一心で抱いたかもしれない。
認めたくない
認めたくないけど、そういうズルさが俺に隠れているのは事実。
口に出したら認めてしまいそうで
その抱いてはいけない気持ちに気づいてしまいそうで、何も言えずに口ごもっていると
「そういう時点でさ?
真彩は負けてるんだよ、寧々に。」
「…え…??」
「わかんない??
いけないと思いながらもSEXに至る寧々に、SEXするに至らない真彩。コウちゃんがどっちを大事だと思ってるかなんて…一目瞭然だとは思わない??」
ジュンはハァとため息を吐きながら、こんな悪魔な一言を口にする。
――寧々に負けてる…??
そうなのか??
俺の中の真彩は絶対の存在で、真彩以外の女の子は目に入らないほど、溺れてると思ってた。真彩に感じるこの心地よさも、ドキドキも何もかも、真彩だからだと思ってたけど…違うのか??
気づかなかった
気づきたくなかった、ホントの気持ち
認めたくない
認めたくなかった、自分自身の醜い部分
少しでも口に出したら核心に触れてしまいそうで
「言いたいことはそれだけ??」
ジュンから逃げ出すようにクルリと踵を返して、アイツの視線に背を向けると
「いい加減、認めろよ!!
コウちゃんは真彩を女として好きなワケじゃないんだろ!?」
アイツは俺も知りたくなかった、気づきたくなかった本音をズバッと直球で突いてくる。
「ただ、自分を好きでいてくれる、自分を認めて見つめてくれる、そんな真彩を離したくないだけなんだ!!一人になりたくないから、天涯孤独な自分を認めたくないから、自分を好きでいてくれる真彩を繋ぎ止めたいだけなんだろ!?」