あの日、あの夜、プールサイドで
「ち、ちがう!!
俺は好きだよ。
ちゃんと真彩のこと好きだよ!!」
「ウソつけ!!
コウちゃんは、真彩の女としての存在なんて、これっぽっちも求めてねぇ!!ただ……求めてるだけなんだろ??欲しくて欲しくてたまらない、何よりも欲しいと望んでる理想の家族を真彩に求めてるだけなんだろ!?」
「…ちがう!!!」
「違わねぇよ!!
コウちゃんは真彩が好きだから欲しいんじゃない。オンナだから求めてるんじゃない!!コウちゃんは…真彩の後ろに見え隠れする、あったかな家族に憧れてるだけなんだ!!コウちゃんが欲しいのは家族であって、真彩じゃない!!」
「…ちがう!!」
「違わねぇ!!」
俺の気づきたくなかった気持ちの、ど真ん中。
そこを平気で抉(エグ)ってくるジュンはやっぱりジュンだと思う。
恋してる
俺は真彩に恋してる
最初はきっとそうだった。
あったかで柔らかくて
いつも穏やかな真彩は間違いなく俺の初恋で、いつだって憧れの女の子だった。
だけど…いつからだろう。
俺は無意識のうちに“家族”を意識するようになってしまった。
真彩とずっとこのまま付き合ってたらいつか夫婦になるのかな。
夫婦になったらいつか子どももできて、寧々みたいにカワイイ女の子に出会えるのかな。
真彩と結婚できたら…俺はもう一人じゃなくなるのかな。
そしたら…さ??
いつも突然俺に襲い掛かる、空しさや、泣きたくなるほどの孤独感は、もうなくなるのかな。真彩と結婚して家族になれば、俺は、もうそんな思いから解放されるのかな。
自分を見守ってくれて包んでくれて、俺を好きだというあの真彩の優しい視線に見守られながら、俺はやっと自由になれるのかもしれない。
淋しい、悲しい、何も持たない自分から、やっと卒業できるのかもしれない。
真彩と、一緒にいられれば……。
俺は……そんな都合のいい夢を見た。