あの日、あの夜、プールサイドで
自分の中に確かにいて
気づかないふりをしていた
気づきたくなかった自分自身。
そんな自分を見せつけられて、呆然と立ち尽くしていると
「わかった??わかったならいい加減、真彩を解放してやれよ。」
ハァとため息を吐いてジュンはゆっくり俺の肩をポンと叩く。
真彩を解放する…??
それは別れろ…ってコトか…??
『コウちゃん。』
『コウちゃん大好き。』
『大丈夫だよ?コウちゃんの夢は私の夢でもあるんだから。』
頭の中でリフレインする真彩の甘ったるい声に、穏やかな笑顔。
無理だ……
無理だ、無理だ、そんなの無理だ!!
失いたくない。
俺は真彩を絶対に失いたくない!!
「イヤ…だ…。」
「…はぁ??」
「絶対イヤだ!!
俺は真彩とは絶対に別れない!!」
手のひらに爪が食い込むんじゃないかと思うほど、強く強く手を握りしめながら
「俺は…もう真彩なしじゃ生きられない…!!」
俺はジュンの方を振り返りもせずに、きっぱりと言葉を紡ぐ。
真彩が俺の近くから去っていく。
俺と違う他の誰かのモノになる。
俺を見つめるあの瞳が、他の誰かのモノになるだなんて考えただけで吐きそうだ。
許せない。
そんなこと、絶対に許せそうにない。
ズルいのはわかってる。
真彩が求めてるのと同じように、俺は真彩を求められないくせに…。自分の側にいて欲しい,離したくない,だなんて、ムシがいいにも程がある。
だけど……必要なんだ。
俺には真彩が絶対に必要なんだ。
俺が…俺であるために。