あの日、あの夜、プールサイドで
「俺は絶対に真彩とは別れない!!」
真彩がいなきゃ…
俺は立ってさえいられない。
真彩のあの視線が
あの声が
俺を俺でいさせてくれる。
“生きてもいいよ”
“頑張ってもいいよ”
“必要な人間だよ”
そう、思わせてくれる。
俺は…さ??
自分に自信なんて何にもない。
そもそも生きててもいいのか、俺に生きる意味があるのかすら、よくわからない。
結局俺は、最後の最後で自分を肯定できない淋しい人間なんだ。
もちろん月原に出会って、競泳出会って、少しずつ変わってきたとは言っても人間そんなに簡単にココロの芯から変われるはずなんてない。
生まれた瞬間に実の母親にさえ捨てられて
ゴミみたいに赤ちゃんポストに押し込められた、俺。
誰からも必要とされない
ただ邪魔な存在として生まれ落ちた、俺。
そんな、いらない命。
誰にも必要とされない俺。
そんな俺を必要として
強く強く求めてくれる唯一の人が真彩なんだ。
寧々が天国に旅立ってしまった今、縋(スガ)る人間はこの世にもう真彩しかいない。
ジュンが言うとおり…
俺は弱くてズルくて、誰より醜い。
俺は真彩を失いたくない。
失ってしまったら、俺はきっと俺じゃなくなる。
あのひたむきな瞳を失ったら、俺は今度こそ気が狂う。
落ちて、落ちて、もう元には戻れないくらいに堕ちきって……俺はきっと気が狂う。
だから俺は……絶対に真彩を失いたくない。
そんな俺を見てハァとため息を吐くと
「じゃぁ、真彩とSEXできるわけ??」
「…どうだろ。
ヤろうと思えばできるんじゃない??」
「不毛だな。
失いたくないから抱くなんて。
そんなSEX、意味なんてどこにもないじゃないか。」
「それでも…だよ。
意味なんてなくたって構わない。
真彩を失わなくてすむなら、それでいい。」
「…卑怯者め……。」
俺の背中に向かって
忌々しそうにジュンがつぶやく。