あの日、あの夜、プールサイドで
卑怯者…か…。
そうかもしれない。
真彩のこと、オンナとして強く求めてるワケでもないのに繋ぎ止めるためだけに抱くなんて、真彩が聞いたら泣いて怒り狂うと思う。
でも……
「卑怯でもなんでもいいよ。
好きは好きなんだから。
真彩を失わずに済むのなら……俺はどんなことでもしてやるよ。」
卑怯でも何でも、もういいや。
俺は真彩が好きなんだから。
失いたくない、大事な人なんだから。
悪魔に魂を売ってでも、俺は真彩を離してなんてやらない。
解放なんて…出来るはずない。
ジュンを振り返りもせずにベッドに向かって歩いていくと
「まぁ…コウちゃんのやりたいようにしていいけどさ??あんまり真彩を傷つけてくれるなよ??」
ジュンは俺の背中に向かってこんな言葉を吐き出した。
「…わかってる。」
コクンと頷いてベッドに腰掛けて
アイツに向かい合う形でゆっくり見上げると、ジュンは困ったようにポリポリと頭を掻いて、バツが悪そうに俺から視線を反らしていた。
――あんなに怒ってたくせに。
さっきまでの勢いはどこへやら。
いつもと同じ頼りにならない弟の顔を見せたジュンが可愛くてフフッと笑うと
「なぁ、ジュン。」
「ん??何??」
「俺も1つ聞いていいか??」
俺は気になっていた疑問をぶつけるべく、アイツに優しく問いかけた。
「…なに??」
「オマエ、真彩のコト好きなのか??」
抱く、抱かない、の押し問答を続けながら思っていた疑問。
ここまでコイツが怒るってことは、真彩に対して特別な感情を抱いてるからじゃないのか??だから、俺と真彩に別れて欲しくてそういうこと言ってるんじゃないのか??
その疑問は
「好きだよ。」
あっさりとした短いジュンの一言で、一気に解決。