あの日、あの夜、プールサイドで


ふ~~~ん。
なんだかんだ言いながらもコイツにも下心があるんじゃないか。


「へ~~ぇ。だから何かと真彩の肩を持つわけだ。」


突然身近に現れたライバルを牽制するべく、攻撃的な一言を口にすると


「まぁね。
あわよくば…って所は否定はしないけど、好きだからこそ真彩には笑ってて欲しいんだよ。」


ジュンは俺の挑発的な言葉をサラリとかわして、こんなオトナな一言を口にする。


「俺は幸せオーラ満載の真彩が大好きだからさ??真彩が幸せそうに笑っててくれればそれでいい。別にコウちゃんから略奪してやろうとか、寝取ってやろうとか、そういうあくどいことは一切考えてないから安心していいよ。」



ジュン……



本当ならこの言葉にホッとするべきなんだろう。
ジュンには悪意があるわけでも、攻撃的な気持ちがあるわけでも何でもない。


正々堂々とライバル宣言しただけだったんだから、目くじら立てる必要なんてない。


ジュンの言葉を素直に汲み取って、今以上にもっともっと真彩と向き合って、今以上に大切にしなきゃいけない。ただそれだけのことだと頭の中ではわかってるのに、ココロの中に生まれた黒い感情をとどめることができない。



気づきたくなかった、ずるい自分。
直面させられた醜い自分。
打算的で自信のない、取るに足らない存在の自分。



今まで“イイコ”の仮面に隠れて影をひそめていたけれど、一度見つけてしまったら最後。後は醜く暗い感情は膨らむのみで、攻撃的な自分がどんどんどんどん顔を出す。




「なんだ、それ。」

「…え??」

「そんなキレイゴト言っててもさ??真彩が俺のことでオマエに泣きついてきたら“ラッキー!!役得~!!”とか思ってんじゃないの??」

「…は??
何言ってんだよ、コウちゃん。」

「キレイすぎだよ、ジュン。
俺と違って純粋に真彩が好きなんだよな??
キレイだな~。キレイな恋心だよ、ジュン。
きれいごとすぎて……反吐が出る。」


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