あの日、あの夜、プールサイドで
「光太郎……!!」
「寧々は俺のかわいい、自慢の妹なんだ。絶対に絶対に渡さない!!絶対に渡さないからな!!」
腹のそこから振り絞るようにそう叫んで、俺はクルリときびすを返すとツカツカと自室目指して歩きだした。
ムカつく
ムカつく
ムカつく……
なんなんだ、あの安っぽい女。
絶対に今現在もホステスだろ。
夜の間、寧々を一人で放置するつもりか??
今は一緒に暮らしたくても、絶対にああいう女はダメになる。
そのうち寧々の世話がめんどくさくなって、寧々を不幸にするに決まってる。
寧々のことを思って、怒り狂う俺。
寧々のために怒っているのは間違いなかったけど……半分は見たことも会ったこともない、自分の本当の母親に怒りの矛先が向いていた。
きっと、俺の母親もああいう安っぽい女なんだ。
自分の欲望のままにSEXして
さんざん気持ちよくなった挙げ句
その代償としてできた俺をアッサリと捨てた女。
赤ちゃんポストという、人間のゴミ箱に俺を捨てた女。
寧々の母親を見ると、嫌でも自分の本当の母親を思い出して苦しくなる。
あんなつまんない、しょーもない女の腹から自分も生まれたのかと思うと、自分が自分で嫌になる。