あの日、あの夜、プールサイドで
俺なんかと違って、キラキラした気持ちで真彩に恋してるジュンが妬ましかった。
俺だって…
俺だってジュンと同じような気持ちで真彩に恋していたかった。
だけど俺の生い立ちが
そして寧々の死が
俺を普通じゃいさせない。
普通に恋して
普通に求め合って
普通に愛を育むコトなんて、きっとできそうにない自分。
俺とは違う
言葉には出さないけれどジュンのこの視線は、そう言っているみたいで凄くムカつく。
「あざといよな~、ジュン。ハッキリ言えばいいのに。
真彩と付き合ってる俺が羨ましいって。」
クスクス笑いながら
バカにしたようにそう言うと
「あのなー、言っただろ??
俺は真彩の笑顔が見たいだけだって。」
「ふ~ん。
イイコのジュンくんはそれで満足なんだ。
大好きで大好きで堪らない真彩が俺なんかに抱かれちゃっても平気なんだ~。……一途だねぇ。」
「いい加減にしろよ、コウちゃん。」
ジュンはあからさまに不機嫌な顔をして俺を睨む。さっきまでの激しい怒りをたたえたにらみ合いではなく、静かな静かなその視線。
――ムカツク…
その視線が俺のイラつきを加速させる。
月の光に照らされただけの、薄暗い室内。
やがてその明るい月も暗い暗い雲が隠して、やがて部屋の中を漆黒に塗りつぶす。