あの日、あの夜、プールサイドで

暗闇の中、キラキラ光って闇夜を照らす美しい月光


だけど、雲間に隠れた月は光らない


キラキラした月光は暗い雲に押しつぶされて
そこにあるのはただの闇。


何も映さず
何も生まない
何も感じない、ただの闇。



――まるで俺の心みたいだ



空っぽで
空虚で
何もない

ただ真っ暗なだけの暗い空。




そんな……闇の中でのにらみ合いがどれくらい続いただろう。


雲間から月が顔を出し、少しだけ部屋の中が仄(ホノ)かに淡い光で照らされた時


「オマエも俺と一緒じゃん。」

「…は??」

「結局、真彩に告白する勇気も近づく勇気もないんでしょ??そのくせ愛情だけは誰よりある“つもり”でいるんでしょ??そんなの…俺と一緒じゃん。」


自分でもびっくりするくらい冷静な声で、俺はジュンをあざ笑う。




どんなにきれいごと言ってもオマエも俺と一緒じゃないか。


恋じゃないくせにコレは恋だと思いこもうとしてる俺に、真彩のことが好きなくせに行動に移さず“笑顔を見てるだけでいい”とかきれいごとで自分の勇気のなさを隠してるジュン。


ズルいのはどっちだよ。
俺もオマエも同じじゃないか。



同じ穴のムジナのくせに
一人でイイコぶるんじゃねーよ!!

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