あの日、あの夜、プールサイドで
妬ましかった。
憎らしかった。
なんの疑問もなく真彩を好きだと言えるジュンが眩しくて、羨ましくて、俺はギタキタに傷つけばいいと心底思った。
ジュンをめちゃめちゃにしてやりたい。
めちゃめちゃに傷つけてしまいたい。
そんな気持ちに駆られて。俺はアイツが傷つくであろう言葉をわざと選んで、アイツの優しい心を抉(エグ)る。
「俺を卑怯者って言ったけどさぁ??
ジュンだって同類じゃね??」
「コウちゃん…」
「俺のことたっぷり説教してくれたけどさーぁ??」
「………。」
「真彩に下心満載のクセに、よく偉そうに説教できたよねぇ??そういうの何ていうか知ってる~??“偽善者”……って言うんだよ、ジュン。」
俺が口を開くたび、ジュンの顔がどんどん歪む。
苦しそうに、ツラそうに眉を歪めるたびに、俺はぞくぞくするほどの満足感を得てしまう。
――やっぱ…ダメだ。
どんなに取り繕っても、どんなに隠そうとしても…これがきっと俺なんだ。
ゴメンな、寧々。
オマエの憧れる、オマエがずっと好きでいてくれる、そんな兄ちゃんになろうとしてたけど。そんな自分でありたいと願っていたけれど…俺の本質はやっぱりどこか歪んでる。
どんなに静枝さんが愛情をかけてくれても
真彩が愛をささやいてくれても
やっぱりダメだ。
俺の中には…
俺を捨てたクソみたいな両親の、腐ったDNAが根付いてる。