あの日、あの夜、プールサイドで


こんな自分が嫌になって
心の底から自分自身に嫌気がさして
ふと下に視線を移すと……


俺の胸元にぶら下がる、寧々のお骨の入った大切なお守りが目に入る。


――寧々…


寧々ならどうするだろう。
寧々が生きてたら、こんな俺をどう思うだろう。


なんて言うかな。
やっぱりプリプリ怒るんだろうか。



『ムゥ~~っ!!コウ兄ちゃん、メッ!!
ジュン兄ちゃんは心配してるだけなんだから、そんなにプリプリ怒っちゃいけません~!』


『え、えぇっ!?』


『カッコわるーい!!カッコ悪すぎーっ!!
そんな兄ちゃんとはケッコンしてあげないんだからね~っ!!』


『え、えぇーっ!?』




悪魔で残忍
自分本位で自分勝手な俺と
寧々が教えてくれた、優しくキラキラ輝くコウ兄ちゃんがケンカする。


寧々が教えてくれた柔らかで温かな時間が、俺を俺に立ち戻す。



しっかりしろ、俺!!
今のまんまじゃ、どう考えたって寧々に怒られて、嫌われる。


深呼吸しよう!深呼吸!!


「スー、ハー、スー、ハー。」


ゆっくり息を吸ったり、ゆっくり息を吐いていると、さっきまでの殺気はどこへやら。だんだん心の中が穏やかになってきて、悪魔なキラから寧々の好きな“コウ兄ちゃん”に徐々に徐々に戻っていく。




――ありがとな、寧々

そうだよな??
コレは俺が100パーセント悪いよな。
ジュンに“言い過ぎた”って謝るよ。



ジュンと対峙しながら、そんな気持ちに駆られていると


「ってか…噛みつく相手が違うから。」


ジュンはギロリと俺を睨みつけながら、こんな言葉を口にする。




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