あの日、あの夜、プールサイドで

優しい、優しい、静枝さん。
大好きでたまらない、俺の大切なお母さん。


そんな静枝さんの作ってくれた朝ごはん。
最後に残ったお味噌汁を口の中に流し込むと、俺は隣に置いていたカバンを手に取り


「行ってきます!!」


元気よく静枝さんに声をかけた。



静枝さんはにっこりと微笑むと

「気を付けてね、光太郎。
今日一日があなたにとって素敵な一日でありますように!」

爽やかな笑顔で俺に笑いかけてくれたのだった。




早いもので、もう二月。
冬の朝は遅い。朝の五時とはいっても辺りは真っ暗。


口からこぼれ出る息は絵の具で書いたように真っ白で、凍てついた空気に触れた指先が凍えるほど冷たい。


「寒っ!!」


凍える指にハァと息を吹き掛けて手袋をはめて、頭にはとニットをかぶると、駐輪場に置いてある自分の自転車にクイッと跨がる。


まだまだ寝静まった辺りに響くのは俺がチャリを漕ぐ音だけ。


静枝さんは電車を使えって言うんだけど、俺は雨の日以外はなるべく自転車を使うようにしてるんだ。


トレーニングにもなるし……なによりも経済的だろ??


それに朝のこの澄みきった空気が俺は好き。

だから、そんなに苦でもないんだなー。
これが。






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