あの日、あの夜、プールサイドで
――寧々……
「おかえり!
寧々、コウにいちゃんが帰ってくるのずっと楽しみにしてた~。」
「ふふっ。寧々ちゃんは本当にコウちゃんが好きなのね。」
「うん!寧々、世界で一番コウ兄ちゃんがだーいすきっ!」
そう言って
俺が今一番ほしい言葉をくれる寧々。
俺の足元にキュッと抱きついて、俺が好きだと言ってくれる寧々。
俺が必要だと言ってくれる寧々。
その瞬間、俺の中でなにかが弾けた。
「コウにいちゃん……??」
「コウちゃん……。」
俺は泣いていた。
気づいたら俺は泣いていたんだ。
俺を求める小さな手
俺を求めるひたむきな瞳
汚れのない心に
汚れのない感情
あぁ、そうか。
求めていたのは俺だったんだ。
この手と
この瞳の存在が、俺の孤独を埋めてくれていたんだ。
一番欲しかったモノは全部寧々がくれたんだ。
いてもいいよ、って。
ここにいてもいいよ、って寧々が俺を幸せにしてくれてたんだ。
一番欲しかった自分という人間の存在意義を寧々が全部満たしてくれていたんだな。
寧々が俺を好きなんじゃない。
俺が寧々を好きで好きで。俺を求めるこの小さな宝物が好きで好きでたまらなくて。
寧々に俺が必要なんじゃなくて
俺に寧々が必要なんだ――……