あの日、あの夜、プールサイドで
大人ぶって、俺を明らかに馬鹿にしたその視線に、激しい怒りを感じる。
――ムカツク……!!
「いけません!!月原先生!!
冷静になるべきです!!
血で血を争っても誰も幸せにはなれません!!」
挑発的な月原を見て静枝さんも苦言を呈す。
だけどそんな静枝さんの必死の言葉も空しく
「オマエなんかよりも俺の方がこの子のコトをわかってやれる。」
「…は??」
「俺の方がこの子の淋しい心も醜い心も優しい心も全て包んで愛してやれる。」
月原は更に挑発的な言葉を紡ぎだす。
「ふざけんな!!俺だって……俺だってわかってやれる!!」
負けたくない!!
同じ男として…こいつだけには絶対に負けたくない!!
ムカつく…!!
俺がガキだからと思って甘く見てるんだろ!!
そんなオトナな恋愛なんて俺には出来っこないと思うから、そういうコト言うんだろ!!
ふざけんな!!
俺はガキでも子どもでも、俺なりに真彩をちゃんと好きなんだ!!
好きなオンナを取られて“あぁ、そうですか”って納得できるほどオトナじゃない!!
月原から見たら明らかに子どもでガキな、16歳の俺。
人生経験だって何だって、俺は月原に背伸びしたって敵わない。
だけど…さ??
窮鼠(キュウソ)猫を噛むって言葉知ってる??
非力で小さなネズミでも、必死になればネコを噛む。
殴ってやる…
殴り続けて、顔中血まみれにしてやる…!!!
許さない。
絶対に許さない…!!!
「いけません!!光太郎!!」
「離して、静枝さん!!
一発殴らないと気が済まない!!」
「いけません!!」
激しい闘争心に襲われて、我を忘れて怒り狂う俺。そんな俺を必死になって止める静枝さんに、ハラハラと大粒の涙をこぼしながら俺たち3人の攻防を見つめる真彩。
ハァと小さくため息を吐くと
「キラ。自分のことだけで精一杯で、本当のこの子をわかろうともしてやらない、ガキで醜い所有欲だけ一人前のオマエにどうしてこの子が幸せにできる??」
月原は諭すように俺の瞳を静かに見つめた。