あの日、あの夜、プールサイドで
――は……??
その目は深い暗闇を湛えた、あの怖い瞳じゃない。
俺よりも世界に失望している、あの瞳じゃない。
その目はどこか淋しそうで、切なそうで、心配げで……。なんとも複雑な思いをたくさん抱えた視線だった。
人を小バカにした月原の視線。
人に対しての絶望をたたえた、あの視線。
見るたびに俺を怯えさせた
どこか哀しい、あの瞳はどこにもいない。
「殴れ、キラ。憎め、キラ。
俺を憎んで憎みきって、オマエの気が済むまで殴ればいいさ。それでこの子を守ってやれる権利が手に入るのなら……俺はそれで本望だから。」
どこか凶悪でどこか狂暴だったあの瞳の代わりに現れたのは…深い深い慈愛の瞳。
視線でわかる。
瞳でわかる。
月原和也という最低で最悪な教師が、真彩のことをどれだけ好きか、この目一つで全てが分かる。
「キラ、俺は真彩が好きだ。」
「…ふざけんな!!」
「オマエのこともちゃんと好きだから諦めようと思ってたけど……オマエの与える偽物の愛でこの子が傷つくぐらいなら、俺はもう引く気はねぇよ。」
真っ直ぐな瞳。
裏表のない、月原の初めて見せたその視線。
「この子から手を引け、キラ。
オマエじゃこの子を守れない。
オマエの幼い恋心は、優しいこの子を追い詰めて、苦しめて……壊してしまう。」