あの日、あの夜、プールサイドで


重い重い、月原の最終通告。



――わかってる。



この時点で俺は“負け”だと。
ジュンに指摘されたように、俺の好きはきっと普通の“好き”じゃない。


大きな意味で言えば俺の好きも、月原の好きも、真彩の好きもきっと意味は同じなんだろうけど……俺の“好き”は家族としての“好き”。


月原の言う“唯一無二の愛”ではない。




俺は簡単に真彩を抱けない。
それは昨日の事件で立証済みだ。
あんなにせがまれても俺は真彩を抱けなかった。


むしろ、嫌悪感すら感じてたんだ。
オンナの顔を見せた真彩に――……



ジュン。
ジュンの言うとおりだよ。
俺の心の中には寧々がいる。


ヒマワリみたいな笑顔で笑う、俺の天使。
誰も彼女の代わりには、なり得ない。





真彩は好きだ。
お母さんみたいに柔らかで、優しくて、いつだって俺を包んでくれて……そしてどんな俺でも愛してくれる。


『コウちゃん、だいすき!』


その言葉にどれだけ救われたかわからない。



俺は…さ??
きっと重ねてたんだ。
理想の家族と理想の母親を真彩の陰に重ねてた。



大好きなのに最後の最後で甘えられない静枝さん。
どこまでも許してくれて、甘えさせてくれる、真彩。



俺はきっと男と女の愛じゃなく、見たこともない、感じたこともない母親の愛を真彩の影を通して求めてた。きっときっと、求めてた。



真彩の見せる笑顔の後ろに
俺を捨てた、恨むべきダメな母親の影を重ねてた。


こんな風に愛されたい。
もしかしたらお母さんはこんな風に愛してくれるのかもしれない。



期待……してたんだ。
真彩が優しくしてくれるたび、傷つき泣いてる、自分の中の小さな自分は泣きたくなるほどホッとしてたんだ。


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