あの日、あの夜、プールサイドで
ハハッ…
ダメじゃん、俺。
どんなに頑張っても、どんなに取り繕っても、俺はこの答えに結局行き着く。
愛し際されたことのないこの俺が、どうして誰かを愛することが出来る??
――最悪だ。
恨むよ、神様。
誰からも愛されず
誰を愛することも出来ない俺をどうしてこの世に誕生なんかさせたんだ。
こんな風に淋しく哀しく、何にも持たず、誰からも与えられない、空っぽな自分に気づかされるくらいなら…俺はこんな世界に生まれたくなんてなかった。
きっと生まれ無かった方が幸せだったに違いないのに!!
――嫌いだ。大っ嫌いだ!!
俺から寧々を奪った神様。
俺から母親を奪った神様。
それだけじゃ飽き足りずに真彩まで奪うのか。
手のひらの拳を握りしめながら、俺は俺に絶望する。
その絶望に押しつぶされないように
全てのイラつきをぶつけるように
「歯ァ、食いしばれ!月原!!」
「光太郎!!!!」
俺は静枝さんの制止を振り切って、月原の左頬に思いっきり殴りかかる。
その瞬間。
殴られた衝撃で月原はガクンと倒れ、道路に尻餅をついていた。
「せ、先生…っ!!!」
心配そうに月原に走りよる真彩に、血の滲んだ唇を右手の甲で拭う月原。
俺はツカツカと歩み寄り
「まさかだけどさぁ??
一発で済むなんて思ってねぇよな?月原ァ!!」
今度は左手でアイツの右頬を思いっきりドカリと殴る。
「キャァーっ!!!」
真っ赤に腫れ上がった俺の両拳。
体ごとアスファルトに倒れ込んだ、月原のカラダ。
「コウちゃん、やめて!!」
立ち上がって俺のカラダを制止しようとする真彩を振りほどいて、ガラ空きになった月原の腹を思いっきり踏みつけると
「ウグゥ…っ!!」
月原は苦しそうな声を漏らした。