あの日、あの夜、プールサイドで
◇そしてボクは悪魔になった
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紺色に光る空、灯りだすほのかな家の明かりを見つめながら、俺は必死に自転車を漕いでいた。
もう何にも考えたくなかった。
数時間前まではウキウキしながらこの道を進んでいたハズなのに、今の俺は重い気持ちを抱えながら元来た道を戻っている。
SGに着いたころにはもう練習の半分のメニューが終わっていて、連絡もなく遅刻した俺に向かってコーチはキツいカミナリを一発落とした。
「いつも真面目に頑張ってるからお説教だけで許してやるけどな。コレからはちゃんと遅れる時には連絡入れろ。」
そう言って、きついコトを言いながらもコーチは俺を水の中に迎え入れてくれたのだった。
キツイキツイ練習。
いつもは苦しくなるときもあるけど、今日ばかりはそんな練習が嬉しかった。
泳いでいる間は、あの事件を忘れられる。
哀しくて泣いてても、悔しくて泣いてても、水の中にいれば誰も何も気づかない。
必死に練習メニューをこなして、練習終了時間になった頃。
「あの…俺、もうちょっと泳いで帰ってもいいですか??」
俺は思い切ってコーチに直談判してみた。
とにかく愛児園には帰りたくなかった。
真彩の顔も見たくなかった。
部屋に帰った途端に起こるであろう、ジュンのお説教も聞きたくなかった。
どこでもいいから、逃げ場所が欲しかったんだ。