あの日、あの夜、プールサイドで
渡さない
絶対に渡さない…!!
渡したくない
寧々だけは絶対に奪われたくない…!!
その気持ちだけが膨らんで
ただひたすら寧々を抱きしめる。
目の前にいる母親に目が向かないように
俺から目をそらせなくなるように
ただ必死に抱きしめる。
願いを込めて
寧々を抱きしめる俺
どこにも行きませんように、と願いをかける。
だけど………
「寧々、ママよ?
わかる??私はあなたのママなの…!!」
「…え…??」
「ずっと一人ぼっちにさせてごめんね。ママ…やっと帰ってこれたの。ママはね??寧々を迎えにきたのよ??」
悪魔は寧々に甘い言葉で囁く。
――行くな、行くな、行くな!!
寧々がどこにも行かないように、俺はさらに強い力で抱きしめる。
行っちゃダメだ!寧々。
オマエは俺の妹だろ??
世界で一番好きなのは俺なんだろう??
じゃぁ…行くなよ!
どこにも行くな!!
ここにいろ!
ここにいてくれよ!!寧々……。