あの日、あの夜、プールサイドで


なのに……


『殴りたいなら殴れよ、キラ。
それで気が済むなら殴ればいい。
そのかわり……真彩は俺が貰って行く。』


月原は俺を裏切った。
俺が一番傷つく、一番残酷な方法で、俺をメタメタに傷つけた。



――信じてたのに。



月原は俺の味方だと。
どんなことがあっても俺の味方だと、信じて疑いすらしなかったのに



『ほ、欲しかったのは…私も一緒なの。
ズルいから。私はズルいから流されてるフリをしてたけど……先生を欲しいと思ってたのは私も一緒だから!!』



真彩と月原は俺を裏切った。



「うっ…ふぅ…っ!!」



水の中で嗚咽が漏れる。
その声、その涙がプールの中に響くのが嫌で、泳ぎをバタフライに変えてバシャバシャと大きな水音をたてながら俺は泣く。



――もう…誰も信じない。



俺はココロにそう決めた。



――もう二度と愛さない。



俺は自分にそう誓った。



信じて、愛して、裏切られるのはもうこりごりだ。


信じるから、裏切られる。
愛するから、壊される。


人は簡単に人を裏切る。
人は簡単に人を傷つける。


信じることも愛することも、もう疲れた。


愛を求めることも、愛そうと努力することも……もう、うんざりだ。


求めても手に入らない。
俺は誰も愛せないし、誰からも愛されない。
本当の愛を求めれば求めるほど、愛されない自分がつらくなる。


求めて裏切られて
信じて裏切られるぐらいなら
もう俺は誰も愛さないし、信じない。


むしろ……利用してやる。


金も愛も、何もかも
俺は全てを利用してやる。


そうすれば、きっと俺は強くなる。
愛すれば愛するほど、信じれば信じる程、きっと人は弱くなるんだ。


誰も愛さず、信じない自分になれば……
俺はきっと誰よりも強くなる。


そう。誰よりも何よりも、強くなる――……
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