あの日、あの夜、プールサイドで
「ありがと、ジュン。
また頼むな。」
ジュンの茶封筒を手に取って
報酬の入った封筒をジュンに差し出す。
アイスティーを一口飲んで立ち上がると
「コウちゃん。」
ジュンが心配そうに俺を見つめる。
「何?ジュン。」
コートを羽織りながらニッコリとほほ笑むと
「桐谷さんってさ……どことなく真彩に似てないか??」
ジュンは言いにくそうにこんな言葉を口にする。
――は??真彩??
久しぶりに聞いたその単語に激しくイラつく。
向坂真彩
俺を弄んだ挙句、月原を巻き込んで俺を捨てた、サイテーオンナ。3年前、月原と結婚して子どもを産んだ、と風のうわさに聞いたけれど……今の俺には興味もなければ関心もない、ただのオンナだ。
「…似てないよ。」
「おっとりした話し方とか、ふんわりした雰囲気とか似てないか??」
「似てないよ。
どう考えたって、おねーさんの方が美人でしょ。
真彩はフツーだもん。」
イラつきながら答えると
「俺は…さ??
真彩に似たオンナが藤堂の周りにいるのが、コウちゃんは気に入らないのかと思ったけど。」
ジュンはさらにこんなムカつくことを口走り始める。