あの日、あの夜、プールサイドで
欲しがる母親
守りたい俺
2つの相反する気持ちを一身に受けながら、小さな寧々は
「ま、ママ…。」
「そうよ。私はあなたのママなの。
いらっしゃい、寧々。
ママにあなたを抱きしめさせて。」
「マ、ママ!!
ママ…ママーーっ!!」
俺の腕の中でママと叫んで大暴れする。
寧々…行くな!
行くな、行くな、行くな、行くなーーっ!!
必死に俺の腕の中で暴れる寧々を力づくで押さえつけていると、母親の後ろで事態を見守っていた静枝さんがゆっくりと俺に近づき、俺の肩にポンと手を置く。
「コウ兄ちゃん、離して!寧々、ママの所に行く!!ママの所に行きたいのぉーっ!!」
そして俺の顔をじっと見つめると、静かな顔をしてフルフルと首を左右に振る。
『諦めなさい』
まるで、そう言っているかのように。