あの日、あの夜、プールサイドで
食うのにも困るぐらいの笑えるぐらいの貧乏生活。
服なんていっつもボロボロで同じヤツ。
何度友達に家と服装をバカにされたかわからない。
そんな中でも高校に行くことが出来て、三流の名もなき大学に行けたのは俺に競泳があったからだ。小さなころから名門と呼ばれるクラブで練習を積んでいて、全国でもそれなりの結果を出していた、俺。
家がそんな状態になっても『和也は才能がある。月謝は出世払いで構わないから練習を続けろ。』とオーナーが言ってくれたから、今がある。
中学・高校は公立。
大学は全額無償でいいから来てくれ!と言ってくれた三流の体育大学を選んで無事卒業した後…俺は中学校の教師になった。
「オヤジ。」
「うん??」
「俺も稼げるようになったからさー??
もうちょっといい家に引っ越そうぜ。
家賃は俺が出すからさ??」
それを機に6畳一間のオンボロアパートとは、やっとオサラバ。2LDKのフツーの一般的なアパートに男二人で引っ越した。
生活がやっと安定して、それなりに教師としての基盤が出来た頃。
「ふ~~~ん。吉良光太郎……ねぇ……。」
「あぁ、吉良くん!
先生のクラスになったんですか??
スッごくイイコですよ~!!優しいし頭もいいし運動もできるし……あんな境遇の持ち主だなんて思えないですよ。」
俺は吉良光太郎というウワサのオトコの担任になったのだった。