あの日、あの夜、プールサイドで


生まれたときに赤ちゃんポストに捨てられて
光の子愛児園の園長の養子として育つ
いわくつきのオトコ、吉良光太郎。



――ふ~~~ん。

世の中にはいろんな不幸があるんだなぁ……。




それがアイツを知った時の第一印象。


ま、俺よりかマシか。
服だってちゃんとしたの着てるしさ??
一日三食はちゃんと食べてるみてぇだし??



ま、俺のどん底中学生活に比べたら
あんなの不幸の中には入らねぇな。




ワンコみたいなかわいい外見
薄茶に光る猫っ毛に、印象的な茶色の瞳


文武両道の優等生


それが吉良光太郎というオトコだった。




実際、担任になってアイツと毎日関わる様になっても、その気持ちはあまり変わりはしなかった。恵まれてない生い立ちだけど、恵まれてない生活は送ってない、吉良光太郎。


まぁ、なかなか個性的なバックボーンを抱えてるけど、コイツはコイツなりにそれなりに楽しい人生を歩むんだろう。



そう思っていたけど……




「先生!!このままじゃ水泳部、廃部になっちゃうよ!!」


「えぇ!?」

「今年も新入部員がいないんだ!!
俺たち3年生が引退したら、2年生は3人しかいないんだよ!?このままだとマズイって!!」




水泳部の奴らがそうやって直談判に現れてから、事態は急転した。


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