あの日、あの夜、プールサイドで
俺、月原和也は水泳部の顧問をしている。
まぁ強くはないけどそれなりに頑張ってるやつらの手伝いをするのは楽しくて、毎年夏場になるのが楽しみだったけど……。そういや新入部員がいなかったな……。
俺の学校では部員が5人以下になると部活としては認められない。部員が5人以下になってしまうと廃部に追い込まれてしまうのだ。
――うーーーん、それはマズイ。
「なんとかしてよ、先生!!」
「うーーん、なんとかって言われてもなぁ…。」
「名前だけでもいいんだよ!
先生、生徒に声かけてみてよ!!俺たちも声かけるからさ!!」
こいつらはこいつらで、やっぱり必死。
俺も水泳部の顧問って立場は気に入ってる。
ってことはしょうがない…
ここはひと肌脱いでやるか。
「よっしゃ、任せとけ。
運動神経よさそうなヤツに声かけてみるわ。」
そう啖呵を切った5月の半ば。
俺が職員室に呼び出したのは、吉良光太郎。
「吉良、お前水泳部に入らないか??」
「え?水泳?」
「そう。お前運動神経もダントツだし、体は柔らかいし、筋肉も柔らかい。絶対にいい選手に育つと思うんだよなぁ……。」