あの日、あの夜、プールサイドで
「まあ、そりゃそうだろうけど…。
それを言われちゃキラもキツイと思うぞ??」
「だって…!
コウちゃんが高校に入ってから一回もデートしたことないんですよ?!私は二の次なのかなぁ…とか思って競泳にヤキモチ妬いちゃいます。」
中庭のベンチに座って二人でカフェ・オ・レを飲みながらまったり話していると、真彩は突然こんなことを言い始める。
ーー若いなぁ。
真彩を見ながら思っていたのは、そんなこと。
どんなに落ち着いたように見えても、精神的に大人でも、こういう所は17歳の女の子だな。
恋愛に振り回されて、好きな男のコトで頭がいっぱいで、どうでもいいものにヤキモチを妬く辺りは、本当に子どもだ。
同い年で、それ相応の経験値を積んでるオンナがこんなこと言い出したら、かなりドン引きするけど……可愛いもんだ。
プゥッと膨れる真彩のホッペを見ながら
「じゃあ、デートしたい!ってキラに言えばいいじゃん。」
俺はそんな一言を口にする。
「…え……??」
「デートしたいよ〜、って素直に言えばアイツもちょっとは考えんじゃねーの??」
良くも悪くもキラは猪突猛進タイプだ。
こう!と思ったら思った道をとことんまで突き抜ける。それがあいつの強さの源でありいいところでもあるんだけど……。
自分が必要だと思うもの以外を簡単に切り捨てるところがあるのも、否めない。
だから、真彩の優しさに甘えて彼氏らしいコトは放っぽりだして練習に集中してるんだ、と俺は思う。