あの日、あの夜、プールサイドで


「もう…よくわかんないよ…。
私との未来の為に、今をどうでもいいって言っちゃうコウちゃんがね??わかってるのに、ツラい。」


「向坂さん……。」


「見えない未来なんかより、私は今の自分をもっともっと見て欲しい。」



キャハハという無邪気な子どもの声と、温かい陽だまり。キラキラとした日差しの輝く中庭で呟いた、真彩の切ない一言。


こんなに明るい世界で、一人ショックに打ちひしがれている真彩。



そんな彼女を見ていたたまれなくなった。

あの時の俺はキラのことなんて頭の隅から消えていて、自分が教師だと言うことも、真彩は教え子の彼女だと言うこともそんなことは全て全て忘れていて。



「じゃあ…さ。
俺とデートしてみる??」


「……え……??」


「キラの代わりに俺とデート、してくれない??」



自然とそんな言葉が口からこぼれ出していた。


まばたきもせず、彼女を中庭のベンチで見つめていると


「じょ、冗談ですよね??」


真彩は心底驚いた顔をして、俺に尋ねる。


そんな彼女に


「冗談だけど、冗談じゃないかなぁ。」

「え??」

「キラはさ?向坂さんがどうあっても自分のものだから、安心しきってるんだよ。キラをもっと自分に振り向かせたいならさ??ヤキモチ妬かせればいいんだよ。」


俺はこんな、嘘をつく。



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