あの日、あの夜、プールサイドで
「聞き分けのいい女は女で、男にとっちゃありがたいけどさぁ?それだけで終わりだと結局キラにいいように使われて終わりそうだぞ?一緒に一泡吹かせてみないか??」
うーん!と伸びをしながらそんな言葉を呟くと、真彩は戸惑いの表情で俺を見つめる。
「どういうことですか??」
「どうもこうもそのまんまだよ。
男は手がかかる女ほど可愛いんだって。おねだりされたり、甘えられたり、駆け引きってヤツも恋愛には大事なワケよ。」
男は結局オスだからな。
狩猟本能ってヤツが本能の中に隠れてるから、捕まえるまでが楽しいんだと俺は思う。
うまくいかなければいかないほど燃えるのが男という生き物で、手に入れたら飽きてしまう生き物が男なのだ、ということを身を持って実感している俺は
「違う男に懐いてる向坂さんを見たら、絶対アイツも焦るって。」
ウブな真彩にこんな悪魔な提案をし始める。
“あくまでも、コレは真彩の為を思ってのコト”
そう自分に言い聞かせてはいたけど、ホントはそれはウソだった。
ただ俺は欲しかっただけなんだ。
柔らかに笑う、春の陽だまりのような彼女が欲しいと思っただけなんだと思う。
奪うつもりだったんだ。キラから真彩を。
無意識のうちに⋯⋯ううん、違うな。意識的に俺は真彩を奪ってやりたかったんだと思う。倫理だとか、体裁だとか、そんなものがどうでもいいと感じる程に、俺は彼女に強く惹かれてしまったんだと思う。