あの日、あの夜、プールサイドで
戸惑う彼女から手を離して、ダイニングチェアから立ち上がる。リビングのローテーブルに置いてあった家の鍵を手に取ると
「…ってことで…送ってくよ、真彩。」
「え??」
「こんな雰囲気の中で一緒にいるのいやだろ??」
自嘲気味に微笑むと真彩はフルフルと首を振る。
「そんなこと…ない…です。」
明らかに緊張した面持ちで話すもんだから、言葉とは裏腹に真彩の戸惑いが深く伝わる。
「いいよ、無理しなくて。
あんまり遅いとキラも心配するだろ??」
キラは俺のこと信用してくれてるとはいえ、それでもやっぱり自分の彼女が一人暮らしの男の家に行くのは嫌悪感があると思う。(それにあいつ、真彩に依存してるし。)
ま、ここはこんな雰囲気になっちゃったところでお開きにするのが筋ってモンだろ。
フッと笑って、玄関に足を進めると
「コウちゃんは…今日いないから。」
俺の背中の方に向かって、真彩は小さく何かを呟く。
ーーは??
彼女の言葉が気になって後ろを振り返ると
「あ、今日からコウちゃんは全日本の合宿に行ってるから…いないの。だから、大丈夫…です。」
真彩はこんなワケのわからない言葉を紡ぎ始める。