あの日、あの夜、プールサイドで
予想外の真彩の言葉。
「な、何言ってんだよ。」
その言葉に強い動揺を見せた俺。
それに相反するように、真彩は恐ろしく冷静だった。
「いい…よ?先生がそれで楽になれるのなら…それでいい。」
「ば、ばか!
良くないだろ?!
大人をからかうもんじゃない!!」
フイッと顔を背けて
「ほら、行くぞ!」
玄関に向かって足を進めると
「ヤダ…!!帰らない!!」
真彩はダイニングチェアからガタンと立ち上がって、俺にこんな言葉を投げつける。
「だって…先生、私とサヨナラする気でしょう?!」
は…??
意味がわからずゆっくり真彩の方を振り返ると真彩は涙でグチャグチャの顔をしたまんま、俺を必死に見つめている。
「ま、あや…。」
「わかってる!わかってるんだよ!こんなの変だ、って。私はコウちゃんの彼女なんだから揺れちゃダメなんだ、って。だけど……先生と話したり、会ったり、そんな時間がなくなるのは凄くイヤなの!!」
そう言って、真彩は俺に向かって小走りで走り寄って来たんだ。黒くて長い髪をたなびかせながら、走り寄ると、真彩は胸の中に飛び込んで俺の腰に腕を絡めた。
「わかんない…自分で自分がわからない。コウちゃんを裏切っちゃいけないってわかってるのに……。わかってるのに……!!!」