あの日、あの夜、プールサイドで
そう言って俺の胸でワンワン泣き叫ぶ、真彩。
小さな肩を震わせて、俺にギュッとしがみついて泣いてる彼女を可愛いと思った。愛おしくて、切なくて、このまま彼女を抱きしめて自分の物に出来たらどれだけ楽になれるんだろう、と思った。
彼女の柔肌に口付けて、俺のものだという紅いシルシを身体中に刻みつけて、泣いても叫んでも彼女の全てを奪えたら、どれだけ満足できるんだろう。
そうしたい。
いろんな欲望に正直になってしまいたい。
人間の理性より動物的な本能のままに真彩を蹂躙できたらどれだけ楽になれるんだろう。
だけど…さ?
キラを裏切りたくないのに、と彼女は言った。
俺を選ぶ、とは言わなかった。
俺には惹かれてるけど、キラを裏切ることはできない。
それは俺も同じこと。
真彩に惹かれてはいるけど、キラを裏切りたくない。裏切ることは決して出来ない。
そういうこと…だよな??
俺たちは惹かれあっているけど、結ばれることは決してない。それなら、俺が出来ることは一つしかない。
「真彩。家に帰ろう。」
「…え…。」
「このままここにいたら、オマエは今日のこと死ぬほど後悔するに決まってる。オマエはキラの彼女。それを貫き通して…俺のことはなかったことにすればいい。」
俺はそう言って。
彼女の体をゆっくり離すと、ニッコリ微笑んでこう言った。
「サヨナラ、真彩。
もう…これっきりだ。」