あの日、あの夜、プールサイドで
だから俺は意地になってた。
寧々を渡したくない、と。
俺がこの手で寧々を幸せにしてやるんだ、と。
だけど……
こんな風にママ、ママって泣きじゃくる寧々と母親を見てると、案外そうじゃないのかもしれないと思えだした。
ちゃんといるのかもしれない。
俺たちのコトをずっとずっと愛して、ずっとずっと大事に思ってくれていて、本当に自分たちを求め、救ってくれる母親がいるのかもしれない。
本当に心の底から俺たちを望んで
必死の思いで迎えに来てくれる、そんな母親もいるのかもしれない――……
「ごめん、ごめんね、寧々。
ママ、がんばるから。
がんばるから一緒に暮らそう??」
「ママ…ママァ!!」
「愛してる、愛してるわ、寧々。
ママ…寧々がいないと生きていけない…!!!」
チャラい恰好
安っぽいホステスみたいな恰好をした寧々の母親。
見るからに軽薄そうで
金にだらしがなさそうで
ダメダメな母親だけど……
寧々に対する愛情は本物だと思えた。
悔しいけど、本物だって思えた。
抱き合いながら
泣きあいながら
お互いの愛を確認する寧々と母親。
そんな二人を呆然と見つめていると
「いいものでしょう??」
静枝さんはそう言って
俺の肩にポンと手を置く。