あの日、あの夜、プールサイドで
◇ ◇ ◇ ◇
柔らかな彼女の身体を後ろに感じながら、俺はシャコシャコと自転車をこぐ。
車じゃなく自転車で二人乗りなんて、高校生以来で恥ずかしかったけど…これが最後だと思えば嬉しかった。
車よりもずっと近い距離で、ずっとずっと長い時間、真彩と一緒にいられるんだと思うと俺は凄く嬉しかった。
「もう時間も時間だからさ?愛児園まで送って行くよ。」
「え??」
「今の時間電車に乗ったら、酔っ払いのオッサンがわんさかいるからな。危ないから…このまま送る。」
もちろんそれは建前で、ただ真彩と一緒にいたかっただけなんだけど、純な真彩は
「ありがとうございます。
やっぱり先生は優しい…。」
そう言って真彩は俺のTシャツの裾をグッと掴んだ。
真彩と二人で帰る帰り道。明るい街を抜け、住宅街を越え、少し山の方に入って行くと愛児園に続く道が現れる。
うっそうとした木々に覆われて街灯も少ない、細くて暗い田舎道。
この道に差し掛かった時、マジで送ってきて良かったと思った。周りに家もなくて街灯もなくて、草むらや雑木林の多い、この道。
林の中に連れ込んで、イタズラしてやろうっていう最低ヤローに真彩が目をつけられて、そんな目にあってしまったら……俺は自分で自分を許せなくなりそうだ。